がっこう

 

 

小さな小さな箱があった。

色をつけたばっかのべとべとゴムボール、無理矢理詰め込んだ。

箱はぎゅうぎゅう、押して押されてボールはみんなへこんだ。

 

箱が倒れてみんな転がってった。

ボールは凸凹、真っすぐには転がれない。

 

へこんだところにいろんな色がついてた。

赤いボールには青、黄、茶色。

多分まだ名前のついてない色もいっぱいあった。

 

でこぼこ、カラフルなボールがたくさん。

あっちにこっちにころがった。

 

あわててひろって元にもどした。

 

でも箱はぎゅうぎゅうにならなかった。

藤衛門腹切投書

 藤衛門かかることに成りしはいとど口惜し事なれどもその因果は病に御隠れ遊ばし殿の追い腹でも御座りますまいと思す声の有りて投書の書き奉りまする兼ねてより藤衛門と剣の鎬の削りし承太郎が言ふ所に依りますると失踪前日も二人剣の稽古を晴海通りが道場にて励んでいたとのことに御座りまする、日暮れ稽古終わりて御手水場にて承太郎のたまには一杯どうだと誘ひけるに藤衛門何分手元不如意でなと断りけりさもあろうあい分かったと承太郎の返せば藤衛門続けて拙者御家の御用にて明日大阪に行く事になった天下の台所と聞くに旨い魚を食ふのが楽しみだと言ひけり、されば承太郎今の時分大阪の中央蔵屋敷の多く有る辺りで青砥稿花紅彩画をやっていると聞いた菊五郎にまみえることもできるかもしれぬと言へば藤衛門悦びてそれは良い事を聞いた有難うと言ひ帰つたとのことで御座りまするかく承太郎が語りしこと正しければ藤衛門のかかる因果は委細に調べる必要御座りまするゆえ慎んで計らふこと御願ひ奉りまする。

KARTE

  Sea caught the sun and the particles of watercolor are twinkling. Who can give the name for this, she asked me with some respects. As soon as we took a ship, all particles, even elementary particles seemed to vanish and we run into a black screen. That is a dead-end street. Something enormous, I said. She frowned a little still with some respects. My thoughts start flying to another place calmly, I know if she notices it she must be ashamed, however I cannot help substituting myself into “objective function” and I kept her back well. A beetle attacked from both sides, somewhat ridiculous. This much or this much, she said. Small air is captured in slender and flexible fingers. I indicated the door, and dad entered. Our dad pointed his daughter’s left hand. Her face was suddenly flushed and it cast a faint light on my body. Faint red like a national holiday. This is typical and always we played like that. Everyday, how busy we are. Then she picked a snake from the case and stroked it gently. The snake stared at me in a usual way. Mum called us for dinner.

 

郷愁のテーマ

 目下広がる河川は夕焼けを讃えていた。トラスに組まれた朱色の鉄骨の群れが猛然と過ぎゆき、活発な振動音が車内にこだまする。橋に差し掛かったのであった。もう数分とせず着く。ホッとするような背筋の伸びるような、奇妙な気分であった。橋を過ぎると途端にしんとした。何十年の記憶を抱いた町が嘘みたいに広がっていた。女性のくぐもった声が到着前のアナウンスを始める。町を見下ろしたまま、座席脇のレバーを引いて背凭れを起こした。瓦葺きの多い景色が新鮮で、一様に赤く照って綺麗だった。小学校には変わらず楠が聳えていた。かつてよく通った道を知らない子供が歩いているのを見つけ、親近感を覚えた。不意に、過去がどっと溢れ出た。いつの間にかいろんなことを忘却していたのだと、気づいて溜め息が漏れた。人に会いたくなった。昔嫌いだった知り合いにも無性に会いたくなった。車両は次第に減速し、身体がじわりと前のめりになる。停車する前に荷物を持ち席を立った。乗降口へ向かう途中、お土産を買わなかったのを少し後悔した。次はうんと沢山買って帰ろう。そう決意すると、私を迎えるようにゆっくりとドアが開いた。

フィリピンのわたあめ屋さん

 道を歩いています(本当は)。灰色の道は、カメラで見るならば日に当たっている部分は白いですし、影はその真反対に紫だったり、でも雑草の色まで決めるなら仕方ない(私だけじゃない)。空に星は見つかりません(つまり正午)。そして極めつけるならば、それよりなにより、ここはフィリピンに位置します(つまり日本じゃない)。証拠に東経何度なのかと問いかけるような、江戸時代レベルの石頭が硬い人はいませんよね笑?草の先っちょに止まることで有名なバッタと、一緒に歌ったりもしながら歩いていただけの話です。それらをタガログ語(フィリピン語に合致します)でなんというか教えましょう。いや知りませんでした笑。私が知っているのは「サラーマット」、日本語に一番素直に翻訳できるなら「ありがとう」を意味すると決められました。もちろん一人で歩いています(私に他なりません)。でもそれは、私は全く歩いた経験が大脳の中に見つからない場所にいるから、孤独を食べて生きる妖怪になった気分なのは嘘発見器でバレてしまう一番のことって事です。でも私はなんといっても「不撓不屈」と友人の集団から陰で騒がれる対象だったので、寂しくありません(ここで空が快晴になってヒヨコが3匹舞う)。いけない笑。話したい事はタイトルに印刷されたわたあめ屋さんのことが唯一なのに、遺伝的な原因からでしょう母親もそうでした(父も頻繁にそう言うので信憑性の固まり)。つまり45分授業と5分休みが互いに入れ替わる仕組みの学校の授業の如く盛大にまくしたてながら言うことにすると、わたあめ屋さんに出くわしちゃったのは目に見える真実です。木造平屋3階建てを幼少期の私に思い起こさせるのはもちろんわたあめそのものじゃなくて、その屋台のこと(大阪仕込みのボケ)。青い汁がかけられた感じに見えなくもない鹿みたいな顔の持ち主がわたあめをこしらえるスペシャリストなのには、目が割れるくらい驚きました。ところで説明し忘れていたことを謝罪すると同時に説明すると、わたしはごめんなさい優柔不断な人間に生まれ育ったのでした。わたあめを買うか買わないか過度に迷ったのは、スポーティーなスポーツ選手なら恥じているに違いない泣。知っていますみなさんが気になるのは御味の方でしょう。うまい!これはうまい(うま煮を食べる歌舞伎役者みたいな声)!そう声を大にして叫ぶ少年を目の前に眺めながら食べると一層美味しく感じました(舌で)。幸福ってこういうベストタイミングに使うべき熟語なんだろうなーと、顔を丸くして笑ったはずです。それがフィリピンのわたあめ屋さんです。どうかみなさんも深海魚博物館に行くのに匹敵するくらい楽しみにし続けてください。店の名前の教えを請う要望やクレームが私の耳に集結する近未来が見えますが、告発するといっぱい御客さんが来て店主も困り果てた全身になるという私の深読みには歯止めが効かないので、それはここだけの秘密にしちゃおう自分勝手でごめんなさい(蛙みたいに謝ってばかり)。みなさんがフィリピンに家族旅行してわたあめ屋さんなどを見つけたら、多分それが私の今しがた話したものと完全に一致するものと考えて欲しいって、はっきり口にできる自信だけは満々です(最後は王道に格好良く)。それじゃあ白黒ごちゃごちゃ混ぜられたけど、さようなら。みなさんもこの夏場を活発に過ごしてください。健康にだけは気をつけるよう私に電話のたくさんの穴の中から注意するのがおじいちゃんとおばあちゃんの共通点です。さようなら。

「生まれたままで」(乃木坂46)における玉虫織り効果

 先日学会発表の資料を作成しながら乃木坂46の「真夏の全国ツアー2015」を視聴していた際、印象的だったVTRがある。それは各メンバーが乃木坂46の楽曲から自分が好きな歌詞の一節を呟くというものだった。非常によくできた(本当によくできた)VTRだった。

 橋本奈々未(或いは故・橋本奈々未氏)はVTR中で「生まれたままで」の次の一節を口にしていた。

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神話1 〜 馬

かつて、山は海で雪が川だった。

馬は駆ける生き物だから、とくに山から愛されていた。ギムアクは馬を捕まえて尋ねた。

お前は首を切り落とされるか足を切り落とされるかどちらかを選べ。さもないと頭を空に突っ込んでお前の社に雷を落とすぞ。

馬は座り込むと仔馬に戻って叫んだ。

「カニアシク!カニアシク!」

空が揺れて大地が星となり時は雨粒になって降った。

サムラニゲスは顔を赤らめると岩に打ち付けて馬を粉々にした。馬は座り込むと仔馬に戻って叫んだ。

「カニアシク!カニアシク!」

森は縮まって太陽になった。月は婚礼の儀式を済ませると唇から血を吐いて目を丸くした。四角形が三角形に凌辱されて馬は粉々になった。

馬は座り込むと仔馬に戻って叫んだ。

「カニアシク!カニアシク!」

ギムアクは仕方なく馬を厚くもてなし平頭して片耳を鼻の中に押し込み、花が咲くその時を待った。村はすでに無くなっていた。

馬は座り込むと仔馬に戻って叫んだ。

「カニアシク!カニアシク!」

馬は座り込むと仔馬に戻って叫んだ。

「カニアシク!カニアシク!」

かつて、砂浜は草原で木々は鳥だった。馬は駆ける生き物だからしばしば叫んでは石を臓器にして雲を助けた。そのかわりに月が割れた。頭を塞いで腕を高く伸ばしなさい。赤子は馬に踏み潰されて岩に変わると我々の村の寝床となった。

 

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